インスリンのすべてを解説。再生医療との関係、糖尿病治療の可能性も解説
監修医
日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会専門医。
2012年より東京女子医科大学病院糖尿病・代謝内科助教など歴任。
2022年1月、青山レナセルクリニック院長に就任。
幹細胞再生治療を通じ、国民病で万病の元である糖尿病の根治に取り組んでいる。
糖尿病は、多くの人々にとって馴染み深い疾患ですが、その治療において不可欠な役割を果たすのが「インスリン」です。
本記事では、インスリンの基本的な特徴や種類から、糖尿病との関係、再生医療との結びつき、そして未来の治療への可能性まで詳しく解説します。
インスリンについての理解を深め、その重要性を明らかにしましょう。
インスリンとは?特徴や種類を解説
インスリンとは何か
インスリンは、私たちの体内で生成される重要なホルモンの一つです。
インスリンは主に膵臓の特定の細胞から分泌されます。その役割は、血糖値を適切な範囲に保つことです。食事から摂取した糖分や炭水化物が体内に入ると、血糖値が上昇します。
このとき、膵臓のベータ細胞からインスリンが放出され、肝臓や筋肉、脂肪組織の細胞に信号を送り、これらの細胞がブドウ糖を取り込むよう促します。結果として、血糖値は正常範囲に戻ります。
インスリンは、体内のエネルギー供給を調節し、細胞が必要なエネルギーを得るのをサポートします。また、余分な糖分を肝臓に貯蔵させたり、脂肪細胞に蓄積させたりすることで、血糖値が過剰に上昇するのを防ぎます。
このように、インスリンは私たちの体内で糖代謝を調節し、正常な生理機能を維持するために極めて重要な役割を果たしています。
糖尿病などでインスリンの生成や効果が不足する場合、外部からのインスリン補給が必要となります。
インスリンが血糖値を下げる仕組み
血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌されます。
インスリンは肝臓や筋肉、脂肪組織の細胞膜にある受容体と結合し、これらの細胞にブドウ糖を取り込むサインを送ります。結果として、血糖値は下がり、正常な範囲に保たれます。
インスリンと糖尿病の関係
糖尿病患者さんでインスリン分泌が下がった場合にインスリンが使用されます。またインスリン分泌が保たれている患者でも著明な高血糖を来している場合にもインスリンを使用することもあります。
糖尿病は、インスリンの生産または効果が不足することに関連する疾患です。
1型糖尿病患者は、通常、自己免疫反応によってベータ細胞が破壊され、インスリンの生成が低下、枯渇します。
2型糖尿病患者は、インスリンの効果が低下し、細胞がインスリンに対する抵抗を示すことがあります。糖尿病である期間が長期になると、2型糖尿病患者でもインスリンを使用することがあります。両者とも、外部からのインスリン補給が必要です。
インスリン治療が必要になるとき
インスリン治療が必要になるのは、通常、糖尿病の管理が食事療法や運動療法、内服治療だけでは不十分な場合です。
1型糖尿病患者は診断時からインスリン療法を必要とし、2型糖尿病患者は他の治療法が効果を発揮しない場合や、疾患の進行によって治療方針が変更される場合があります。
早期インスリン療法とは
一部の糖尿病患者は、早期にインスリン療法を導入することが勧められます。
これは著明な高血糖の場合、経口血糖降下薬では血糖コントロールが改善しない場合があります。そういった場合に早期からインスリンを使用し血糖値が正常範囲内になった後に内服薬に変更していく場合があります。
早期治療により、血糖値のコントロールが向上し、患者の生活の質が向上することが期待されます。
インスリンと再生医療の関係
幹細胞を用いたインスリン生成の研究 再生医療の分野では、幹細胞を用いたインスリン生成の研究が進行中です。幹細胞から生成されるインスリンは、患者固有のものであり、免疫系の拒絶反応が起こりにくいため、将来的には個別に合った治療法が提供できる可能性があります。
インスリン再生医療の現在の状況
インスリンを分泌する膵臓β細胞を再生することで、インスリン分泌を改善することが期待されています。
現在、インスリン再生医療は実験段階にあり、臨床応用には時間がかかる見込みです。
しかし、この分野の研究は急速に進展しており、将来的には糖尿病治療に革命をもたらす可能性があります。
インスリン再生医療は、糖尿病治療の分野において革命をもたらす可能性を秘めた先進的な研究領域です。
現在の状況では、幹細胞を活用したインスリンの再生や生成に関して大きな進展があります。
幹細胞からのインスリン生成は、患者固有のインスリンを生産し、免疫系の拒絶反応を抑制するために大きな期待を集めています。
特に、膵臓におけるベータ細胞の損失による1型糖尿病治療への応用が注目されています。
研究者は、幹細胞からベータ細胞への分化プロセスを解明し、安全かつ効果的なインスリン生成方法を開発するために日々研究を実施しています。
さらに、遺伝子編集技術の進歩により、幹細胞を用いた個別に合った治療法の開発が可能です。
しかし、臨床応用にはまだ時間がかかる可能性があります。
安全性や効果の確認、規制の厳格さなど、多くの課題が存在します。
しかし、インスリン再生医療は将来の糖尿病治療に革命をもたらす可能性を秘めており、研究は着実に進行しています。
インスリンに関するよくある質問
糖尿病治療において欠かせないインスリンについて、よくある質問にお答えします。
インスリンに関する知識を増やしインスリン療法について正しい知識を持つことは、糖尿病患者とその家族にとって重要です。
Q1. インスリン療法を始めると一生やめられない?
インスリン療法は、糖尿病の種類や進行具合によって異なります。1型糖尿病患者は通常、一生涯にわたりインスリンを必要とします。しかし、2型糖尿病患者は他の治療法と組み合わせて病状を管理できる場合もあります。医師の指示に従い、定期的な検査を受けることが大切です。
Q2. インスリンの注射は痛い?
インスリン注射は、細い針を使用するため、多くの人にとって痛みはほとんど感じません。インスリンに使用される針は、痛みを最小限にするために特殊な加工がされています。また、最新のインスリンデバイスは、常に身体に装着し、持続的に皮下にインスリン注射をすることで注射の煩わしさや、痛みを軽減する設計がなされています。
Q3. インスリン療法を始めたので、食事療法や運動療法をやめてもいいですか?
いいえ、インスリン療法を受けているからこそ、健康的な食事療法や適度な運動が重要です。これらの要因は血糖値の管理に大きく寄与し、糖尿病の進行を遅らせる役割を果たします。医師や糖尿病管理チームの指導に従い、バランスの取れた生活を維持しましょう。
Q4. 病気になった時にインスリンの注射をしてもいいの?
インスリン使用者が胃腸炎や肺炎などで、飲水、食事摂取が困難な場合sick dayと言います。基本的には、食事摂取ができない場合食前に投与するタイプのインスリンは控えます。時効型インスリンと呼ばれる24時間以上効果のあるインスリンは投与を継続します。ただし、通常用量通り投与した場合、低血糖になる場合もあります。基本的にはかかりつけの医師と相談する必要がありますが、通常用量の50〜80%減量して投与を継続する方法もあります。食事摂取ができない場合、消化のいいもの(スポーツドリンクなど)を取ることがあると思いますが、消化のいい食事は血糖が上がりやすい側面もあります。そういった場合、数時間ごとに血糖を測定して血糖に応じてインスリンを投与する方法があります。いずれにしても、事前に担当医師と相談をして確認することが大切です。
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