最先端の糖尿病治療薬で劇的減量!世界が注目するGLP-1受容体作動薬の効果とリスク ~当院の糖尿病再生医療との相乗効果~
監修医
日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会専門医。
2012年より東京女子医科大学病院糖尿病・代謝内科助教など歴任。
2022年1月、青山レナセルクリニック院長に就任。
幹細胞再生治療を通じ、国民病で万病の元である糖尿病の根治に取り組んでいる。
今年に入り、CNNでは、革新的な二型糖尿病治療薬「Ozempic(オゼンピック)」の効能に関する特集番組が繰り返し放映されています。
米国では、成人の約40%が肥満に該当し、2050年までに「肥満」(BMI 30%以上)又は「太りすぎ」(BMI 25~30%)の該当者は約2億6000万人に達すると予測されており、糖尿病や心疾患などのリスクが一段と高まっています。
この「Ozempic(オゼンピック)」という薬剤は、革新的な糖尿病治療薬である「GLP-1受容体作動薬」の一種ですが、食欲を減退させることで大幅な体重減少を促進させる効果があり、肥満に対する減量薬としても世界中で注目されています。
このため、セレブリティやSNSの影響で、Ozempicやさらに進化した最新の「Mounjaro(マンジャロ)」が「減量薬」として過熱報道される一方、医療資源の不足や不適切な使用が問題視されています。
日本でも、一部でダイエット目的での使用が流行していますが、リスクは無いのでしょうか?
そこで、今回は、話題の「GLP-1受容体作動薬」について詳しく解説します。
目次
世界が注目する「GLP-1受容体作動薬」とは
腸から自然に分泌される「グルカゴン様ペプチド-1」(GLP-1)というホルモンは、食事に応じて膵臓からのインスリン分泌を刺激することで、食後の血糖値を適切にコントロールし、血糖値を上げる要因であるグルカゴンの分泌を減少させることで、肝臓からの糖の放出を抑制し血糖値を下げる機能を担っています。また、このホルモンは、食欲を抑制する機能があり、体重の減少に寄与するため、インスリンの作用が向上するという相乗効果も期待できます。
このように血糖コントロールや減量に極めて重要な働きをするGLP-1というホルモンの作用を模倣して開発された薬剤が「GLP-1受容体作動薬」です。
糖尿病治療薬の進化とGLP-1受容体作動薬開発の歴史
糖尿病治療は、20世紀初頭にインスリンが発見されて以降、血糖値を直接的に下げる薬剤が中心でした。その後、経口血糖降下薬(例:スルホニル尿素薬、メトホルミン)が登場し、治療の選択肢が広がりました。
そして、1985年にGLP-1が膵臓のβ細胞に作用し、インスリン分泌を強力に刺激することが発見されました。血糖コントロールにおいて重要な機能を担うGLP-1ですが、実はこの機能が発見されてからまだ日が浅いのです。
その後、GLP-1の作用機序や生理学的な役割が盛んに研究されるようになり、その結果、GLP-1受容体をターゲットとした新しい糖尿病治療薬の可能性が広がりました。
そして、2005年、最初のGLP-1受容体作動薬である「Byetta(バイエッタ)」(成分名「Exenatide」(エキセナチド))が開発されましたが、効果の持続時間の点で問題がありました。
以降、合成類似体の開発に伴い、より持続時間の長い新薬「Victoza(ビクトーザ)」が2010年に承認され、2017年に、この改良版となる週1回の投与で高い効果を実現した「Ozempic(オゼンピック)」が登場し、2018年にFDA(米国食品医薬品局)を皮切りに各国で承認されました。
そして、日本では、2018年の糖尿病治療薬としての承認に続いて、2023年に、体重管理を目的とした使用についても、承認されています。
ちなみに、これらの薬剤は、患者自身で腹部などに注射する、ペン型皮下注射式となっています。
GLP-1受容体作動薬の食欲抑制メカニズム
GLP-1受容体作動薬は、食欲に対して脳にさまざまな影響を及ぼします。具体的な作用機序は以下の通りです。
これらの多様なメカニズムにより、食欲が極度に抑制され、端的に言えば、「何も食べなくても平気」「何も食べたくない」という状態が続くわけです。
- 1.満腹感の促進:
- GLP-1は、脳内の食欲制御に関わる領域、特に視床下部に作用します。GLP-1が受容体に結合すると、満腹感を引き起こし、食欲を減少させる信号を送ります。
- 2.食欲抑制:
- GLP-1は、食事を摂取した後に分泌されるホルモンで、食事量の調節に重要です。食事後に分泌されることにより、次回の摂取時に食欲を抑える作用が強まります。
- 3.脳の報酬系に対する影響:
- GLP-1は脳の報酬系にも関与していると考えられています。食事に対する快感や欲求を調整し、過剰な食欲を抑えることに寄与します。
- 4.インスリン分泌との関連:
- GLP-1は、血糖値に応じたインスリンの分泌を促進するため、血糖値が安定しやすくなります。これにより、食後の急激な血糖値変動が軽減され、過剰な食欲を引き起こすことが少なくなります。
「劇的な体重減少」とは?具体的な減量効果
そこで、気になる体重減少の程度ですが、ある大規模試験によれば、Ozempic(オゼンピック)を16週間使用した結果、患者は平均10%の体重減少を達成したと報告されており、より長期間の使用では、さらに体重減少が持続する可能性があります。
体重減少の程度は個人の体重、生活習慣、食事、運動量などによって異なりますが、多くの研究においても、大半の患者は約5%から15%の体重減少を経験しています。
これまで何をやっても減量できなかった人達にとって願ってもない朗報と言えるでしょう。
実際、CNNの特集番組では、短期間で50ポンド(※約23kg)もの減量に成功した患者など劇的な事例も多数紹介されていました。
また、Ozempic(オゼンピック)は体重減少を維持するための治療としても効果的であると考えられており、治療を継続することで体重管理を助けることが期待されます。
気になる副作用やリスクは?
このように、Ozempic(オゼンピック)をはじめとするGLP-1受容体作動薬は、食欲抑制や代謝改善を促す点が大きな特徴ですが、いっぽうで、以下のような副作用が伴います。
まず典型的なものとしては、「吐き気」「嘔吐」「下痢」「腹痛」など消化器系の副作用で、特に治療の初期段階に多く見られ、時間の経過とともに軽減するケースが多いです。
しかし、吐き気や嘔吐に耐えられずに、3か月未満で投与を断念する患者も少なくありません。
その他の副作用としては、「頭痛」「低血糖」(特に、インスリンやスルホニルウレア系の薬剤との併用の場合)、また、一部の研究では、心臓に関する影響も指摘されています。
ちなみに、CNNの特番では、「食べる喜び」を失い、大好きだった料理を全くしなくなり、友人との会食が苦痛になり引きこもりがちになることに苦悩している患者たちも紹介されていました。この画期的な減量薬とどのように付き合うかは、極めて個人差が大きいテーマのようです。
長期投与によるリスクは?
この薬剤は、まだ登場から間もないため、長期投与の功罪についての十分な検証データが存在しませんが、現時点で以下のようなリスクが指摘されています。
- 1.膵炎のリスク:
- GLP-1受容体作動薬は膵炎のリスクを高める可能性があると報告されています。特に、膵炎の既往歴がある患者は要注意です。
- 2.腎機能への影響:
- 腎機能に好影響を及ぼす可能性が指摘されていますので、腎機能が低下しているでは、嘔吐や食思不振による腎機能の悪化に注意が必要です。
- 3.甲状腺への影響:
- 動物実験では甲状腺腫瘍のリスクが示唆されていますが、人間での関連性はさらなる研究が必要です。特に家族に甲状腺の病歴がある患者は要注意です。
GLP-1受容体作動薬の種類と最新の薬剤開発動向
前記のとおり、2005年に、現在のGLP-1受容体作動薬の原型である「Byetta(バイエッタ)」)が承認されて以降、改良が続けられ、血糖値や減量効果の向上を実現しています。
現在までに承認され、治療に使用されている主なGLP-1受容体作動薬は、以下の種類があります(2023年時点での情報)。
- ①チルゼパチド(製品名「Mounjaro(マンジャロ」)
- ②セマグルチド(製品名「Ozempic(オゼンピック)」など)
- ③リラグルチド(製品名「Victoza(ビクトーザ)」など)
- ④デュラグルチド(製品名「Trulicity(トルリシティ」)
- ⑤エキセナチド(製品名「Byetta(バイエッタ)」など)
<主要薬剤比較>
成分名 | 製品名 | 機能・特長 | 開発者 | 承認 |
チルゼパチド |
「Mounjaro」 | ・GLP-1受容体に加えて、GIP(グルコース依存性インスリノトロピックポリペプチド)の受容体にも作用する「二重作動薬」 ・食欲抑制だけでなく、エネルギー消費の促進効果あり |
Eli Lillypany (米国) |
2022年/米国 2022年/日本 |
セマグルチド | 「Ozempic」 | ・Victozaの進化版となるGLP-1受容体作動薬 ・作用時間が長く、血糖値及び体重減少効果が高い |
Novonordisk (デンマーク) |
2017年/米国 2018年/日本 (2023年、体重管理目的でも許可) |
リラグルチド | 「Victoza」 | ・Ozempicの原型となるGLP-1受容体作動薬 ・作用時間が短く、体重減少効果は限定的 ・胃腸障害が少ない ・心血管リスク低下の科学的根拠がある |
Novonordisk (デンマーク) |
2010年/米国 2010年/日本 |
デュラグルチド | 「Trulicity」 | ・体重減量効果が低く、痩せている患者や高齢者に使用しやすい ・週1回製剤で、注射頻度が少なく患者負担が少ない |
Eli Lilly (米国) |
2014年/米国 2015年/日本 |
エキセナチド | 「Byetta」 | ・最初のGLP-1作動薬として市場に登場。後続の薬剤に比べて持続時間が短い。 | Amylin Pharmaceuticals (米国) |
2005年/米国 2010年/日本 |
Ozempicを圧倒的に凌駕する最新薬「Mounjaro(マンジャロ)」の脅威の効果
Mounjaro(マンジャロ)は、GLP-1受容体及びGIP(グルコース依存性インスリノトロピックポリペプチド)の受容体の両方に作用する「二重作動薬」で、この二重作用により、食欲抑制だけでなく、エネルギー消費の促進が期待されます。
最新の臨床では、Mounjaro(マンジャロ)はOzempic(オゼンピック)よりもさらに血糖値改善及び体重減少効果が高いことが報告されており、GLP-1単独作用薬の進化形といえます。
そのため、当院では、特に肥満傾向にある糖尿病患者に対し、主に「Mounjaro(マンジャロ)」を処方しています。
<臨床実験における治療効果の比較>
Mounjaro (マンジャロ) |
Ozempic (オゼンピック) |
|
HbA1c改善度(最大) | -2.5~3.0% | -1.5~2.0% |
平均減量率 | -15~22% | -5~15% |
【参考】2型糖尿病患者に対するチルゼパチド(Mounjaro)とセマグルチド(Ozempic)の効果比較」(『New England Journal of Medicine』に掲載)
■研究の背景と目的
チルゼパチドは、GIPとGLP-1の二重受容体作動薬で、2型糖尿病治療薬として開発されました。本研究では、既存のGLP-1受容体作動薬であるセマグルチドと比較して、チルゼパチドの有効性と安全性を評価することを目的としています。
■研究デザイン
40週間の非盲検第3相試験で、1,879名の2型糖尿病患者を以下の4群に無作為に割り付けた(週1回投与)。
- ・チルゼパチド 5 mg群
- ・チルゼパチド 10 mg群
- ・チルゼパチド 15 mg群
—————————————————— - ・セマグルチド 1 mg群
■結果
- ① HbA1cの変化:
- ・チルゼパチド 5 mg群:-2.01%
- ・チルゼパチド 10 mg群:-2.24%
- ・チルゼパチド 15 mg群:-2.30%
—————————————————— - ・セマグルチド 1 mg群:-1.86%
⇒糖尿病指標において、チルゼパチドの全ての用量で、セマグルチドに対して非劣性及び優越性が示された。
- ② 体重減少:
- ・チルゼパチド5mg:平均 -7.6kgの減量
- ・チルゼパチド10mg:平均 -9.3kgの減量
- ・チルゼパチド15mg:平均 -11.2kgの減量
————————————————————- - ・セマグルチド(1mg):平均 -5.7kgの減量
⇒チルゼパチドの用量が増加するほど体重減少効果が大きくなることが確認された。
■副作用:
- ・消化器系の副作用(悪心、下痢、嘔吐)が主に報告され、重症度は軽度から中等度でした。
- ・低血糖の発生率は低く、重篤な有害事象の発生率はチルゼパチド群で5~7%、セマグルチド群で3%だった。
■結論
2型糖尿病患者において、チルゼパチド(Mounjaro)はセマグルチド(Ozempic)と比較して、HbA1cの低下および体重減少において優れた効果を示しました。副作用のプロファイルも類似しており、チルゼパチドは2型糖尿病治療の新たな選択肢となる可能性があります。
出典:https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2107519?
ダイエット目的の人気過熱とリスク
以上のように、GLP-1受容体作動薬の肥満治療としての効果が注目される中、これらの薬剤は単なる糖尿病治療薬を超えた役割を果たしています。特に、セレブリティやSNSの影響で、Ozempic(オゼンピック)やMounjaro(マンジャロ)が「減量薬」として過熱報道される一方、医療資源の不足や不適切な使用が問題視されています。
特に、女性を中心にプロポーション改善、ダイエット目的の使用が広がっており、美容クリニックなどでは保険対象外で処方しているようです。
しかし、本来の目的に基づく医師の適切な指導による使用ではないため、急性胃腸炎で緊急入院した例などもあり、リスクについて十分に認識する必要があります。
今後の展望
糖尿病と肥満の治療の境界線が曖昧になる中で、新しい作用メカニズムを持つ薬剤の開発が進んでいます。特に、最新の二重作動薬であるMounjaro(マンジャロ)を更に改良した、三重作動薬(GLP-1、GIP、グルカゴンの3つの受容体に作用)の開発も進行中で、さらなる治療効果の向上が期待されます。
また、肥満傾向にある糖尿病予備軍に対する使用に加えて、循環器系に対する効果が研究されており、心血管リスクの低下を通じた心血管の健康維持に寄与する可能性があります。
このGLP-1受容体作動薬の進化は、糖尿病患者だけでなく、肥満と関連する多くの慢性疾患を抱える人々にとっても希望の光となっています。今後の開発動向から目が離せません。
~最先端の薬剤処方からきめ細かな生活指導まで~
当院独自の「トータルな糖尿病再生医療」
当院では、再生医療の力で糖尿病の根治を目指すことを目標に掲げ、他院に先駆けて本格的に糖尿病再生医療に取り組んでいますが、患者様のこれまでの治療の経緯やかかりつけの主治医の治療方針を全否定するのではなく、個々の患者様の意向や生活環境を踏まえて、既存の薬剤の見直しや生活習慣指導まで“きめ細かくトータルな再生医療”を提供しています。
糖尿病専門医である当院院長は、今回ご紹介したGLP-1受容体作動薬の最新動向についても精通しており、治療効果の低い初期の薬剤である「Byetta(バイエッタ)」を処方されていた患者様に対し、最新の「Mounjaro(マンジャロ)」への変更をアドバイスした結果、一気に3.5キロの減量に成功し、再生医療の効果と併せてHbA1cや腎症の指標である尿中アルブミン比率が大幅に改善した事例もあります。
すなわち、最先端の薬剤の力を借りて短期間で減量を行いつつ、幹細胞や培養上清エクソソーム治療による炎症抑制や血流改善を通じた根本的な体質改善を図るという、相乗効果が発揮されるわけです。
▼糖尿病再生医療と同時にGLP-1受容体作動薬の見直しを行った結果、減量と糖尿病指標の改善に成功した事例
このように、当院では、糖尿病専門医である院長の識見と豊富な臨床経験を活かし、幹細胞治療と当院オリジナルの最高スペックの乳歯歯髄由来幹細胞培養上清エクソソームとの併用を中心とする“トータルマネジメント”により、最高の治療パフォーマンスを追求しています。
また、多くの糖尿病患者様に向き合う中で、糖尿病患者のほぼ全員が、末梢血管障害によりEDを併発している事実に直面したため、日本で初めて陰茎海綿体への幹細胞の局所注射治療を提供しており、臨床実績を蓄積しています。
糖尿病とEDの根治を同時に目指すこの治療は、多くの悩める男性患者様から支持されています。
なお、当院の糖尿病再生医療は、他院と異なり年齢の上限はありませんので、多数の80代以上の高齢患者様が安全に治療を受けています。
▼軽度~重度の糖尿病患者の糖尿病再生治療臨床例
当院の糖尿病再生医療・再生医療の詳細内容については以下のページをご覧ください。
当院では、糖尿病撲滅のための特別プログラム「ASATAKU道場」の第2期モニターを募集しています。再生医療の可能性を実感し、糖尿病からの解放を目指すための第一歩を踏み出してみませんか
当院は、糖尿病専門医監修のもと糖尿病の根治を目指して再生医療の提供のみならず
薬剤の選定から生活習慣指導までトータルマネジメントを実践しています。
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