カテゴリ:旧ブログ

最新の運動療法について

先日糖尿病学会年次学術集会に参加してきたので、最新の知見を紹介したいと思います。

 

運動療法は、食事療法、薬物療法に並び治療の柱となります。保険診療の構造上の問題もあり、運動療法に関しては基本的には外来診察の場でしか指導できません。そのため、患者さん達の運動療法に関する理解や、モチベーションは食事療法に比べてやや物足りない印象があります。

 

身体活動を増やすことで、糖尿病や脂質異常症、高血圧、肥満症の治療になり認知症、脳卒中予防が可能です。また骨折、転倒、老衰に対しても予防となります。認知症や脳卒中に対しては想像しやすいと思いますが、骨折や転倒を予防し、健康な状態の寿命を伸ばすことも同じく大変重要になります。

 

糖尿病患者では骨格筋が減少(サルコペニア)しやすいことは、過去多くのデータで報告されています。

 

近年アジア人の場合、太っていなくても代謝疾患(糖尿病など)になりやすいことが報告されています。体重÷身長(身長はメートル)であるBMIが23〜25 kg/㎡でもインスリン感受性の低下(筋肉のグルコースの取り込み能力)が低下していた、という報告がされています。つまり、体重が正常でも代謝的には肥満ということが起きます。

またBMIが18.5未満の痩せている状況でも、糖尿病の発症リスクが高いとされています。実際に、痩せた若年女性で耐糖能異常の発症率が、BMIが正常の若年女性よりも多いとされています。

つまり筋肉量と質(グルコースの取り込み能力)により、糖尿病発症リスクが決まる可能性があります。

 

 

上の図は、成人になるまでに増えた筋肉量、筋力が年齢とともに徐々に低下していくことを表したグラフです。

 

では実際にどのような対策をするのか?

若年では、筋肉の絶対量を増やす 学生時代の栄養や部活動(特に女性)で運動量を増やし、成人以降では、低下を予防するため十分なタンパク質摂取と、レジスタンス運動(筋トレ)をすることが推奨されています。高齢者の場合、短期的な臥床でも、筋力低下の危険性があります。

 

COVID-19感染流行下においては、身体活動量の低下が報告されています(特に女性)。

ウェアラブルデバイスにより、普段の活動量や歩数を把握し、現状の活動量や歩数(+2000歩)を目指し活動量や筋力が落ちないようにしましょう。

 

注意点として、強度の高い運動を行う場合は心血管系のリスクがないかメディカルチェックが必要です。また腰痛や膝痛がある場合、整形外科やトレーナーなど適した運動を確認した上で行いましょう。腰痛や膝痛がある患者さんの場合、プールで水中歩行や、水泳を勧めています。また体重を減量することで、関節に対する負担を減らすことができるので、高度の肥満がある場合は、減量した後に行うことも必要です。

 

糖尿病を持つ患者さんの場合は、低血糖には特に注意してください。

 

最後に、個人的に運動における最も大事な点は、継続性です。

 

運動が続いている患者さん達に共通する点は、運動自体が好きになること、楽しいと感じている、ハマっていることです。趣味になる、位置情報を使用したゲームで歩行する、友人やパートナーとする、ボディメイクを目指すなど、趣味嗜好にあった方法を見つけると継続できる確率が高まると思います。