日本人の死因No.1「動脈硬化症」と「糖尿病」の危険な相関|幹細胞治療の効果に期待

監修医

院長 麻沼卓弥 医師

日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会専門医。
2012年より東京女子医科大学病院糖尿病・代謝内科助教など歴任。
2022年1月、青山レナセルクリニック院長に就任。
幹細胞再生治療を通じ、国民病で万病の元である糖尿病の根治に取り組んでいる。

「動脈硬化症」とは?

動脈の壁が厚くなり硬くなる病態のことを指します。この状態は、動脈内の血流が悪くなり、最終的には心臓病、脳卒中、その他の循環器系の問題を引き起こすリスクを高める可能性があります。動脈硬化のプロセスにはいくつかの段階があり、時間とともに進行します。

動脈の構造

動脈は血管系の一部であり、酸素と栄養素を含んだ血液を心臓から体の各組織へと運ぶ役割を果たしています。動脈の解剖学的な構造は、その機能を効率的に果たすために特化しています。一般に、動脈は以下の三層構造から成り立っています。

① 内膜

内皮細胞

この最内層は、一層の内皮細胞で構成されており、血液が流れるルーメン(管腔)の表面を覆っています。内皮細胞は、血液と動脈壁の間のバリアとしての役割を果たし、血管の拡張や収縮を調節する物質を分泌します。

基底膜

内皮細胞の下に位置する薄い層で、細胞と次の層との間のサポートを提供します。

② 中膜

平滑筋細胞

中膜は主に平滑筋細胞で構成されており、これによって血管の径を調節することができます(血管の収縮と拡張)。この能力は、血圧の調節や血液の流れのコントロールに不可欠です。

弾性繊維

この層にはまた、弾性繊維が含まれており、血管が血液の圧力に対応して伸び縮みするのを助けます。特に大動脈のような大きな動脈では、弾性繊維が多く含まれ、心臓の鼓動に合わせて拡張・収縮することで、血液の流れを助けます。

③ 外膜

結合組織

最外層は主にコラーゲン繊維とエラスチン繊維で構成された結合組織で、動脈に強度と柔軟性を与えます。この層は、動脈を周囲の組織に固定し、保護する役割も果たしています。

これらの層は、動脈が高い圧力の下で血液を効率的に運ぶというその主要な機能を果たすために、協力して働いています。動脈の構造はその位置や担う役割によって異なる場合があり、例えば心臓に近い動脈はより多くの弾性繊維を含んでおり、筋肉に血液を運ぶような小さな動脈は平滑筋の割合が高くなっています。

「動脈硬化症」の原因

動脈硬化の主な原因は、血管内壁における脂質、特にコレステロールの蓄積です。以下は、動脈硬化を引き起こす可能性のある主なリスク要因です。

高血圧

動脈壁に継続的な高圧がかかると、内皮細胞を損傷したり、壁が厚くなり(特に中膜)、硬くなる可能性があります。最終的に血管の内腔を狭窄させます。

高コレステロール

LDL(悪玉コレステロール)は、内皮細胞を損傷し、炎症を起こしプラークを形成します。プラークは脆弱な組織でそこから出血、血栓の原因となります。

喫煙

タバコの煙に含まれる化学物質は、動脈を狭め、壁を硬化させることがあります。

糖尿病

高血糖は、動脈の内壁を傷つけ、糖化最終産物(AGEs)を形成し慢性的な炎症をきたし動脈硬化をおこす可能性があります。

肥満

過体重は、心血管系に負担をかけ、慢性的な炎症を引き起こし、動脈硬化を促進する可能性があります。

不健康な食生活

飽和脂肪、トランス脂肪、砂糖が多い食生活は、動脈硬化のリスクを高めます。

運動不足

定期的な身体活動の欠如は、心臓病のリスク要因であり、動脈硬化の進行を早める可能性があります。

糖尿病と動脈硬化の密接な関係

糖尿病によって引き起こされる動脈硬化のメカニズムは、高血糖が血管内壁に一連の生物学的変化を引き起こすことに関連しています。これらの変化は、炎症、酸化ストレス、内皮細胞の機能不全を促進し、最終的には動脈壁の損傷と硬化につながります。糖尿病による動脈硬化のメカニズムは以下の通りです。

1. 高血糖による内皮細胞の損傷

長期間にわたる高血糖状態は、動脈の内皮細胞にダメージを与え、その機能を阻害します。内皮細胞は血管の健康において中心的な役割を果たしており、その機能不全は動脈硬化の初期段階と考えられています。

2. 高度な糖化最終産物(AGEs)の形成

高血糖はタンパク質や脂質の糖化を促進し、高度な糖化最終産物(AGEs)を形成します。AGEsは血管壁内に蓄積し、内皮細胞の損傷、炎症反応の促進、及び血管の弾性の喪失に寄与します。

3. 酸化ストレスの増加

糖尿病は体内の酸化ストレスを増加させます。高血糖は活性酸素種(ROS)の生成を増加させ、抗酸化物質の防御機構を圧倒します。これにより、酸化ストレスが生じ、内皮細胞の損傷や炎症反応が引き起こされます。

4. 炎症反応の促進

糖尿病は血管内での炎症反応を促進します。酸化ストレス、AGEs、及び内皮細胞の損傷は、炎症性サイトカインの放出を促進し、マクロファージなどの炎症細胞を活性化します。これらの炎症細胞は、動脈壁内における脂質の蓄積を促進し、動脈硬化のプロセスを進行させます。

5. インスリン抵抗性と内皮機能

糖尿病、特に2型糖尿病は、しばしばインスリン抵抗性と関連しています。インスリン抵抗性は内皮機能不全を引き起こし、血管の拡張機能に影響を与えることが知られています。

6. 微小血管疾患

糖尿病は、特に眼や腎臓のような器官における微小血管疾患のリスクを高めます。これにより、これらの器官への血流が損なわれ、全身的な血管機能にも影響を及ぼす可能性があります。

これらのメカニズムは相互に関連しており、糖尿病が進行するにつれて動脈硬化を促進します。動脈硬化は、糖尿病患者における心血管疾患のリスクを顕著に高める主要因の一つです。

糖尿病合併症と動脈硬化による梗塞との違い

糖尿病合併症と動脈硬化による梗塞は、両者とも糖尿病患者において頻繁に見られる問題ですが、その原因、影響を及ぼす器官、および発生メカニズムにおいて異なります。以下に主な違いを説明します。

糖尿病合併症

糖尿病合併症は、糖尿病の直接的な結果として発生する一連の健康問題を指します。これらには大きく分けて、微小血管合併症と大血管合併症があります。

微小血管合併症

高血糖が微小血管(小さな血管)に長期間にわたり損傷を与えることで発生し、特に網膜症、腎症、および神経症を引き起こします。これらは血糖コントロールの悪化により進行しやすくなります。

大血管合併症

心血管疾患、末梢血管疾患、および脳血管疾患など、大きな血管の問題です。これらは動脈硬化の進行により発生し、糖尿病に関連する他のリスクファクター(高血圧、高コレステロール)も影響を及ぼします。

動脈硬化による梗塞

動脈硬化による梗塞は、動脈硬化が進行した結果、血管内の血流が遮断される状態を指します。動脈硬化プラークの破裂や血栓形成により、特定の器官への血流が完全に停止し、その結果として組織や器官の虚血や壊死を引き起こします。この過程は心筋梗塞(心臓への血流遮断)や脳卒中(脳への血流遮断)など、生命を脅かす状態につながる可能性があります。

主な違い

発生メカニズム:糖尿病合併症は主に高血糖による直接的な影響から生じますが、動脈硬化による梗塞は血管壁の蓄積物(プラーク)が原因で血流が遮断されることにより発生します。
影響を受ける器官:糖尿病合併症は網膜、腎臓、神経など特定の器官に影響を与えることが多いのに対し、動脈硬化による梗塞は心臓、脳、下肢など、広範囲の器官に影響を及ぼす可能性があります。
予防と治療:糖尿病合併症の予防と治療は血糖コントロールに重点を置きますが、動脈硬化による梗塞の予防と治療はライフスタイルの変更、薬物療法、場合によっては手術など、より広範なアプローチを要します。

糖尿病患者は、これらの合併症を防ぐために血糖レベルを厳格に管理することが推奨されますが、動脈硬化のリスクを減らすためには、他の心血管リスク因子(例:高血圧、高コレステロール、喫煙)に対する予防措置も同様に重要です。

動脈硬化に対する治療は?

動脈硬化の治療は、進行を遅らせる、症状を管理する、および合併症のリスクを減らすことを目的としています。治療戦略は、ライフスタイルの変更、薬物療法、および必要に応じて手術的介入を含みます。

以下に主な治療法を説明します

1. ライフスタイルの変更

ライフスタイルの変更は、動脈硬化の管理において最も重要な基盤です。以下の変更が推奨されます。

食生活の改善

飽和脂肪、トランス脂肪、および砂糖の摂取を減らし、果物、野菜、全粒穀物、および良質なタンパク質の摂取を増やします。

定期的な運動

週に最低150分の中程度の強度の活動、または75分の高強度の活動が推奨されます。

体重管理

健康的な体重を維持または達成するために努力します。

禁煙

喫煙は動脈硬化を加速するため、禁煙は非常に重要です。

アルコールの摂取制限

飲酒は、適度な量に留めることが重要です。

2. 薬物療法

特定の状態やリスク因子に応じて、以下のような薬物療法が処方されることがあります。

スタチン

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させることで、プラークの蓄積を減少させます。

血圧降下薬

高血圧は動脈硬化の主要なリスク因子であるため、適切に管理することが重要です。

血糖降下薬

糖尿病患者では、血糖レベルをコントロールすることが動脈硬化の進行を遅らせるために不可欠です。

抗血小板薬

アスピリンなどの薬は、血栓の形成を防ぐのに役立つことがあります。

3. 手術的介入

症状が重篤である場合や、特定の動脈が重度に閉塞している場合は、以下のような手術的介入が必要になることがあります。

バルーン血管形成術およびステント留置

狭窄した動脈を広げ、血流を改善するために行われます。ステント(小さな金属製またはプラスチック製のチューブ)が動脈内に留置されることもあります。

バイパス手術

狭窄した動脈を迂回するために別の血管を用いる手術です。心臓(冠動脈バイパス手術)や脚(下肢バイパス手術)においてよく行われます。

動脈硬化の治療は、状態の重症度、患者の全体的な健康状態、および他の医療条件に基づいてカスタマイズされます。そのため、治療計画は患者一人ひとりに合わせて個別に決定される必要があります。

再生医療(脂肪由来幹細胞)の動脈効果に対する効果は?

脂肪由来幹細胞(ADSCs:Adipose-Derived Stem Cells)は、脂肪組織から分離される多能性の幹細胞です。これらの細胞は、再生医療や組織工学の分野で広範な応用可能性を持つと考えられています。動脈硬化に対する脂肪由来幹細胞の効果については、研究が進行中であり、主に以下のメカニズムを通じて効果を発揮する可能性が示唆されています

1. 内皮細胞の機能改善

脂肪由来幹細胞は、内皮細胞の修復と再生を促進する可能性があります。動脈硬化の初期段階では、内皮細胞の損傷が重要な役割を果たしており、これらの幹細胞が内皮細胞の機能を改善し、血管の健康を促進することにより、動脈硬化の進行を遅らせる可能性があります。

2. 炎症反応の抑制

炎症は動脈硬化の進行において中心的な役割を担っています。脂肪由来幹細胞は、炎症を抑制する様々なサイトカインを分泌することで、血管壁の炎症反応を抑えることができる可能性があります。

3. 血管新生の促進

脂肪由来幹細胞は、血管形成を促進する因子を分泌することが知られています。これにより、血管新生が促進され、狭窄した血管の周囲に新しい血管が形成される可能性があり、血流の改善に寄与する可能性があります。

4. プラーク安定化

一部の研究では、幹細胞療法がプラークの安定化に寄与する可能性が示唆されています。これは、幹細胞がプラーク内の炎症細胞の活動を抑制し、プラークが破裂するリスクを減少させることによる可能性があります。

5. 組織修復と再生

脂肪由来幹細胞は、損傷した組織の修復と再生を促進する能力があるとされています。これは、細胞移植後に細胞が血管壁内で分化し、損傷した組織を修復することにより、動脈硬化による損傷の回復を助ける可能性があります。


これらの可能性にもかかわらず、脂肪由来幹細胞を用いた動脈硬化の治療はまだ研究段階にあり、その安全性、効果、最適な投与法に関しては、さらなる臨床試験と研究が必要です。また、幹細胞療法は複雑で高価な場合があり、広範な臨床応用には様々な課題が伴います。

当院は、院長である私が糖尿病専門医として大学病院で患者様に接してきた経験を基にED再生治療を提供しており、既に豊富な臨床例と確かな治療効果を感じております。

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