青山レナセルクリニックで開発中の『Renacell Hyper Plasma SPARK™』は、プラズマを人体に照射する機器です。工業用のプラズマ応用機器は、真空中のプラズマだったり、溶接に使う高温プラズマのため、人体に照射できるものではありませんでした。
近年、半導体の進歩に伴ってパルス幅の狭い高電圧電源の製作が容易になり、人体にプラズマを照射する機器も市販されてきました。しかしながら、プラズマ生成量が十分でなかったり、人体に対して放電したりして安全性に疑問の残るものもありました。
プラズマは導電性のため、高圧電極が露出していると大電流が流れます。『Renacell Hyper Plasma SPARK™』のプラズマリアクタ (プラズマ反応器)は、構造的に高圧電極が露出していないので、安全性の高いプラズマになります(特許出願中)。
さらに、従来のプラズマ美容機器の発生するプラズマは、原料ガスとして空気(Air)しか使用できないため、プラズマの作用として殺菌など限定的なものでした。『Renacell Hyper Plasma SPARK™』は、様々なガスのプラズマを発生できるため、目的に応じたプラズマを照射することで、プラズマ医療の可能性を広げるものと考えています。
各ガス原料の特徴・用途について、東京工業大学沖野研究室の研究成果を参考にまとめると下表のとおりとなります。
<参考>
「企業,受験生向けの 沖野研成果・解説最新資料
「大気圧 プラズマ 装置 の 開発 と 高度利用 24/11」
https://ap.first.iir.titech.ac.jp/pdf/OkinoLab-report.pdf
ガス | 分子記号 | 特徴 | 用途 |
空気 | 窒素70%の混合気体、大気のため安価 | 殺菌、ただしオゾンが発生する | |
水素 | H2 | 爆発限界4%なので注意を要する | CO2分解の可能性あり |
ヘリウム | He | 電離電圧が低くプラズマ化しやすい | 入手困難 |
二酸化炭素 | CO2 | 炭酸ガスとして身近にある | 殺菌、ただしオゾンが発生する |
窒素 | N2 | 大気の主成分、オゾンが発生しない | 親水化、細胞活性に寄与 |
酸素 | O2 | 支燃性があるため取扱注意 | 殺菌、ただしオゾンが発生する |
アルゴン | Ar | 電離電圧が低くプラズマ化しやすい | ヘリウム代替として有望 |
青山レナセルクリニックでは、安全なガスとして、空気、窒素、アルゴンを使った実験を予定しています。本報告では『Renacell Hyper Plasma SPARK™』のプラズマリアクタでマルチガスプラズマを発生させた様子を掲載しました。
空気プラズマ
二酸化炭素プラズマ
窒素プラズマ
アルゴンプラズマ
『Renacell Hyper Plasma SPARK™』が生成するプラズマは、大気圧低温プラズマなので、指に照射してもビリビリするような感電や、火傷するような熱さは、全然ありませんでした。
今後は、施術前後の皮膚表面の殺菌や培養上清の浸透促進、幹細胞の活性化など、目的に応じたガスの選定、または、ガスの配合を調査していく予定です。
2024年7月7日 (文責 : 青山レナセルクリニック 医工連携室長 金子昌彦 Ph.D. )