「糖化」の正体(後編)~肌の老化撃退法~ AGEs(終末糖化産物)が形成する「老化架橋」でしわ・たるみ加速 !再生医療で建て直し
監修医
幹細胞再生治療を通じ、国民病で万病の元である糖尿病の根治に取り組んでいる。
■職歴:
西暦2012年1月〜:東京女子医科大学病院初期研修医
西暦2015年4月〜:医療法人貞心会 西山堂慶和病院勤務
西暦2019年4月〜:海老名総合病院 糖尿病センター勤務
西暦2020年4月~:東京女子医科大学病院糖尿病・代謝内科 助教
西暦2022年1月〜現在:一般社団法人輝実会 青山レナセルクリニック院長
■所属学会等
日本内科学会
日本糖尿病学会
糖尿病眼学会
日本内科学会認定内科医(認定番号107827)
日本糖尿病学会専門医(認定番号7237)
前回のコラムでは、糖と体内のタンパク質の熱反応(メイラード反応)によって生成され、私たちの身体に蓄積される「AGEs(終末糖化産物)」が様々な疾患やダメージを引き起こし、顕著に寿命を縮める元凶であること、長い時間をかけてAGEsが形成される一連の現象を「糖化」と称すること、AGEs指数は、最も正確に寿命を予測類推する新しいバロメーターであること、一度AGEs化した体内のたんぱく質は分解されることはなく蓄積される一方であること、などを解説しました。
本コラムでは、AGEsが肌の老化を顕著に促進させるメカニズムと、再生医療による「糖化した肌のリモデリング」という全く新しいアプローチについて説明します。
目次
肌の構造と老化のメカニズム
人間の肌の“本体”と言える真皮層は、真皮線維芽細胞で構成されており、この線維芽細胞は、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の肌の3大要素を産生し代謝させる重要な役割を果たしています。
これらの3大要素のうち、真皮内の70~80%を占めるコラーゲンは、人間の皮膚のハリや弾力を保持し、表皮と皮下組織を支える極めて重要な成分です。
コラーゲン繊維を結合する健全な「酵素的架橋」
コラーゲンは、20種類のアミノ酸が50個以上結合した鎖状の物質が3重のらせん状に絡まりあった細い棒状の構造となっています。
このコラーゲンを組成しているアミノ酸の一種であるリジンやヒドロキシリジンが酵素と酸化反応を起こすことで結合し、「架橋」と呼ばれる橋のような化合物が形成されます。
その結果、3重のらせん構造になったコラーゲン同士が強固に繊維状に連結されます。
「架橋」で結合されているため、コラーゲン分子同士は容易にほどけない構造になっていて、体内の細胞や組織間を糸のように結びつける役割を果たしています。
繊維状のコラーゲン同士が架橋で結合し、真皮内で強固にネット状に張り巡らされているため、肌のハリと弾力を維持することができるわけです。
ところで、コラーゲンは非常に代謝サイクルが遅い長寿命タンパク質で、皮膚の場合、半分生まれ変わるのに約15年もかかります。
このコラーゲンの代謝を担うのが、コラーゲンと同様に線維芽細胞から分泌されるコラゲナーゼという酵素です。健全なコラーゲン架橋はコラーゲンの産生直後から化学反応により形成され、酵素的架橋と呼ばれるように酵素によって制御されています。コラーゲン繊維同士を橋のように結び、真皮層内に網の目のように張り巡らされることで組織の弾力性や適度な強度を維持し、コラゲナーゼという酵素によってゆっくりとターンオーバーしています。
一般的な肌の老化のメカニズム
ところが、加齢に伴う新陳代謝の悪化や紫外線ダメージを受け続けることで、誰でも線維芽細胞の機能が低下します。線維芽細胞は真皮幹細胞が分化することで産生されるのですが、生誕時には体内に約100億個存在していた幹細胞は加齢とともに激減し、50才前後になると50分の一しか残っていないと言われていますので、幹細胞の減少は線維芽細胞の減少にも直結します。
つまり、真皮幹細胞の減少により、年々不足する線維芽細胞を補充できなくなる上に、線維芽細胞自体の機能が低下するため、肌を維持するために本来必要なコラーゲンなどの産生が追いつかず産生機能が低下する結果、ハリや弾力、潤いが失われて肌が老化するわけです。
それだけではありません。
線維芽細胞の減少により、古くなったコラーゲン繊維を分解する酵素・コラゲナーゼの分泌が滞ると、古くなった余分な架橋がどんどん蓄積されてしまい、コラーゲン線維同士の結びつきが強まり過ぎて、真皮は硬くなり、乾燥しやすくなります。
そして、真皮層が乾燥すると、その影響が表皮にシワとなって現われます。
ここまでは、誰にでも起こる加齢による肌の老化現象です。
肌の糖化による異常な「AGEs架橋(老化架橋)」の形成
ところが、終末糖化産物であるAGEsがコラーゲンを構成しているアミノ酸に結合することで、位置がランダムで、構造的に歪みや硬化などの異常な「AGEs架橋」が形成されます。
このAGEs架橋は、健全な架橋と異なり、非酵素的に生成される糖由来の架橋で、俗称「老化架橋」と呼ぶこともあります。
このAGEs架橋は非常に硬直的で、コラーゲン同士をガチガチに結合させるため、コラーゲン線維は固く、もろく、変形しやすくなります。また、コラゲナーゼによる健全な分解機能が働かないため、古くなったコラーゲンが代謝されることなく固く結合したまま、どんどんこびりついてしまいます。この結果、肌はハリと弾力を失い、乾燥するため、しわやたるみが加速的に進行することになります。
このようなAGEs架橋は非酵素的糖化架橋と呼ばれ、糖がアミノ基と反応することで徐々に形成され、数年から数十年単位で蓄積される結果、組織の硬化や弾力性の低下をもたらします。
糖化に対抗 再生医療のアプローチ
このように、肌の老化促進の元凶であるAGEs架橋ですが、残念ながら、ひとたびAGEsがコラーゲンなどと結合して“架橋”されると、自然に解体されることはありません。AGEs分解促進薬などが研究されていますが、まだ実験段階で、ヒトに対する効果は確認されていません。
従って、蓄積されたAGEsを減少させることは絶望的で、前編でご紹介したように、血糖値を急激に上昇させる食品を控える、抗酸化食品の摂取、食後の運動などに留意し、これ以上AGEsが蓄積されないよう予防することしかできません。
これに対し、当院の再生医療のアプローチは、AGEsによる硬化・変性に対して、組織の構造そのものを新しく作り直す、言わば「組織のリモデリング」になります。
AGEs架橋は、肌への不可逆なダメージですが、現在の治療法では、その蓄積を止めることも、取り除くこともできません。
当院の再生医療は、こうした構造的損傷に対して、直接的な除去ではなく、“組織を再構築しなおす”という全く異なる視点からアプローチします
具体的には、糖化の進行に伴うAGEs架橋の形成により肌の老化に悩む患者様に対し、全身的な糖化抑制と肌の若返りの両方を同時に追求する、というプレミアムな再生医療を提供しています
真皮線維芽細胞移植治療
まず、糖化した肌に対し最もダイレクトな効果を発揮するのが、新しい真皮線維芽細胞の移植です。
こちらは、紫外線などのダメージを受けにくい耳の後ろから皮膚片を採取し、線維芽細胞を抽出して培養し、顔や首のシワやたるみが気になる部位に移植するという治療です。
大量に移植された活性度の高い線維芽細胞が新しいコラーゲンやその分解酵素であるコラゲナーゼを分泌するため、AGEs架橋により硬化し乾燥した肌にハリと弾力、潤いが蘇ります。
ちなみに、この治療法は、殆どの患者様が効果を実感しやすい、非常にシンプルで理に叶った古典的な肌の再生医療です。
幹細胞による肌再生医療
ただし、この線維芽細胞は、あくまで真皮層を構成する細胞で、コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸など肌に重要な細胞外マトリックスの産生と代謝という役割が定まっており、それ以外の作用は期待できません。
従って、真皮の下層にある皮下組織の脂肪細胞の減少に起因する深い弛みを改善することはできませんし、糖化によって形成されたAGEs架橋の直接的な分解は期待できないと考えられます。
そこで当院では、万能の細胞である幹細胞を線維芽細胞と同時に移植するという革新的な「W移植治療」を独自に開発し、糖化した肌のトータルな再生治療を提供しています。
糖化が進んだ肌に対する間葉系幹細胞の作用は、以下のとおり非常に多岐にわたり複合的です。
糖化肌に対する効果 |
作用 |
---|---|
線維芽細胞の活性化 |
成長因子による線維芽細胞のコラーゲン分泌を促進 |
古いコラーゲンの分解促進 |
MMP酵素群をAGEsで架橋されたコラーゲンに誘導 |
新しいコラーゲンの産生 |
線維芽細胞と同等以上にコラーゲンを産生 |
ダメージを受けた肌の修復 |
成長因子・エクソソームによる抗炎症作用 |
血流改善 |
VEGFによる血管新生作用 |
まずは、線維芽細胞の活性化。
幹細胞は数百種類もの成長因子やサイトカイン、エクソソームを分泌しますが、特にTGF-β、FGF、PDGFなどが線維芽細胞を刺激し、コラーゲンの産生を顕著に促進させることが分かっています。
第2に、AGEsで架橋された古いコラーゲンの分解促進効果も期待できます。
幹細胞には、MMPという酵素群を適度に誘導し、AGEsによって硬化した古いコラーゲンを段階的に分解するという報告があります。
第3に、幹細胞は線維芽細胞に分化するだけでなく、幹細胞自身が線維芽細胞と同等以上のコラーゲン産生能があるとされています。
更に、強い炎症抑作用により糖化ダメージを受けた肌の修復、血管新生作用による血流改善効果により肌艶が良くなり透明度が増すなどの効果もあります。
つまり、この「W移植治療」は、新たに移植された線維芽細胞のコラーゲン産生や代謝を幹細胞がフルサポートすることで、硬くなった組織全体をリモデリングし、糖化の影響を受けた肌が再び柔らかく、しなやかさを取り戻すという仕組みです。
資生堂やロート製薬の研究によれば、線維芽細胞と幹細胞は大変親和性が高く、線維芽細胞は幹細胞と共存することで高い相乗効果を発揮するそうです。
▼参考
幹細胞の点滴治療の併用で全身的な糖化予防も!
当院は、糖尿病再生医療のパイオニアとして、糖尿病に対する脂肪由来間葉系幹細胞の点滴治療を年間100件以上施行し、大きな成果をあげています。
これは、脂肪由来幹細胞の持つ抗炎症作用・免疫調整機能・組織修復能により、糖尿病そのもの根治を目指すものですが、同時に糖化ストレスを軽減し糖化の進行を阻止する意味でも有用です。
そのため、AGEs架橋により老化が進んだ肌の再生と糖化抑制のために点滴治療を併用する「Value Plan」というお得なパッケージがお奨めです。
▼当院の抗糖化再生医療の解説動画
~糖化年齢(AGEs値)管理から最先端の薬剤処方導まで~
当院独自の「トータルな糖尿病再生医療」
当院では、再生医療の力で糖尿病の根治を目指すことを目標に掲げ、他院に先駆けて本格的に糖尿病再生医療に取り組んでいますが、患者様のこれまでの治療の経緯やかかりつけの主治医の治療方針を全否定するのではなく、個々の患者様の意向や生活環境を踏まえて、既存の薬剤の見直しや生活習慣指導まで“きめ細かくトータルな再生医療”を提供しています。
当院では、糖尿病専門医である院長の識見と豊富な臨床経験を活かし、幹細胞治療と当院オリジナルの最高スペックの乳歯歯髄由来幹細胞培養上清エクソソームとの併用を中心とする“トータルマネジメント”により、最高の治療パフォーマンスを追求しています。
また、多くの糖尿病患者様に向き合う中で、糖尿病患者のほぼ全員が、末梢血管障害によりEDを併発している事実に直面したため、日本で初めて陰茎海綿体への幹細胞の局所注射治療を提供しており、臨床実績を蓄積しています
糖尿病とEDの根治を同時に目指すこの治療は、多くの悩める男性患者様から支持されています。
なお、当院の糖尿病再生医療は、他院と異なり年齢の上限はありませんので、多数の80代以上の高齢患者様が安全に治療を受けています。
▼参考記事
軽度~重度の糖尿病患者の糖尿病再生治療臨床例
当院では、糖尿病撲滅のための特別プログラム「ASATAKU道場」の第3期モニターを募集しています。再生医療の可能性を実感し、糖尿病からの解放を目指すための第一歩を踏み出してみませんか
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